PALESTINIAN EMBROIDERY

軍事占領下にあるパレスチナ自治区に暮らす職人女性たちと長時間話し合い、
彼らのアイデンティティである手刺繍を通じて、パレスチナ文化の素晴らしさを伝えています。

軍事占領下にあるパレスチナ自治区に暮らす職人女性たちと長時間話し合い、彼らのアイデンティティである手刺繍を通じて、パレスチナ文化の素晴らしさを伝えています。

Palestinian heritage and craftsmanship

僕たちが、イスラエルの軍事占領下にあるパレスチナ自治区を初めて訪れたのは2012年5月のことでした。それ以降、パレスチナの女性だけで運営されたクラフト職人のコミュニティと交流を深めています。

初めて占領下のパレスチナ自治区ヨルダン川西岸地区を訪れた際に、パレスチナの人々が日々直面しているすさまじい不公正と差別を目の当たりにしました。それは、80年代後半のアパルトヘイトが撤廃される前の南アフリカを訪れた亡き父が、僕たちに語ってくれたことを色々と思い出させる光景でした。

パレスチナの人々は、自らが置かれている過酷で不当な現実にも関わらず、僕たちがこれまでに出会った中で最も優しく、親切で、温かく、力強い人々でした。そして、パレスチナの美しい文化は、音楽、工芸品、精神、それから当然、美味しい食べ物と多岐にわたります。 この豊かな文化を多くの人達に共有したいと思った僕たちは、アラビア語の「刺繍」という言葉を由来とするタトゥリーズが彼らの文化的アイデンティティの中心であることをすぐに知りました。3,000年以上前にパレスチナで誕生したタトゥリーズ刺繍のユニークなモチーフは、パレスチナの、とりわけ女性たちの伝統とアイデンティティを表しています。

パレスチナでのプロジェクトを始めたいという強い情熱や思いはありましたが、僕たちはすぐに、いかにこの挑戦が難題であるかを知りました。パレスチナは、貿易を妨げる抑圧的な政策によって支配されている占領国であるため、刺繍を供給したり輸出したりするための物流体制やパートナーシップを新たに構築することは不可能でした。それはつまり、ファッションを通してタトゥリーズ刺繍の美しさを伝えるというアイデアが行き詰まった瞬間でした。

しかし、僕たちは希望を捨てずに、何十年にもわたってこの地域を支配してきた不公正や暴力とは正反対の、芸術を通じた平和と共存の象徴としてこのプロジェクトの実現を信じ続けました。

そして2019年、僕たちはイスラエルとパレスチナ双方にまたがって活動するブランドAdishと出会いました。彼らはパレスチナの文化的遺産が完全にかき消されないよう、パレスチナの伝統的な生活工芸品を用いた活動に取り組んでいます。約10年にもおよび検討を重ねてきた「タトゥリーズ刺繍プロジェクト」は、彼らがもつ刺繍職人たちとのネットワークや物流体制を通じて、2022年に突如として実現できることになりました。

僕たちの最初のコラボレーション・コレクションは、クラフト、素材、品質に徹底的にこだわったスウェットシャツとフーディです。伝統的なタトゥリーズデザインの代わりに、共存の精神と人々の解放を象徴する伝説的な歌手ボブ・マーリーの歌詞を独自の色使いで刺繍しています。ボディには、ペルーの海岸線で採れる天然のピマコットンを使用し、オーガニック認証された染料や方法で天然染色を施しています。

今回の生産過程は、僕たちがこれまでに取り組んできた中で最も複雑でしたが、文化芸術の表現であると考え、とても誇りに思っています。

Our first collaboration collection consists of sweatshirts and hoodies with total focus on craft, materials and quality. Instead of working with traditional Tatreez design, we chose the embroidery to be in our own colourways with iconic lyrics by the legendary Bob Marley, who represents the spirit of co-existence and the liberation of the people. Each garment is made from 100% natural Pima cotton from the Peruvian coastline, all naturally dyed with the highest organic certification.

This is the most complex production we have ever done and we consider it a cultural art expression, which we are very proud of.

Adish

2018年に設立されたAdishは、イスラエルとパレスチナ双方にまたがって活動し、パレスチナの伝統工芸技術と現代的なストリートウェアを組み合わせた、今日の社会問題を意識した服づくりを特徴にしているブランドです。1948年のイスラエル建国をきっかけに激化したユダヤ人とパレスチナ人(アラブ系住民)の民族対立は、度重なる戦争を経てイスラエルが軍事侵攻を進め、現在もガザ地区とヨルダン川西岸地区では不当な占領が続けられています。 イスラエルの多くの人は、この現状を見てみぬふりをすることがほとんどで、実質的にはそれを受け入れているともいえます。そこで、彼らは皮肉も込めて『旧約聖書』時代のユダヤ人の言語だったヘブライ語で「無関心」を意味するAdishをブランド名にしました。

Adishは、パレスチナ系アメリカ人アーティストのジョーダン・ナサール、ラマッラー出身のパレスチナ人クサイ・K、イスラエル人のアミット・ルゾンとイヤル・エリヤフの協働によって設立されたブランドです。彼らが出会ったのは、現在も続く暴力の犠牲となったパレスチナ人とイスラエル人の遺族が集う、和解と持続的な和平の促進を目指すイニシアティブ「ペアレンツ・サークル・ファミリー・フォーラム」の場でした。この出会いが協働のきっかけとなり、新たなブランド「Adish」とタトゥリーズ刺繍を実践するパレスチナの職人たちとの繋がりが生まれました。

すべてのAdishコレクションは、軍事占領下にあるパレスチナとイスラエルで生産されており、デザインの核となる部分にはその地域の伝統工芸の技術が使われています。彼らのコレクションは、ラマッラー、ドハイシャ、ヘブロンに暮らす計60人以上のパレスチナ人女性によってつくられた手縫いのタトゥリーズ刺繍を取り入れています。また、製品には縫製場所とタトゥリーズ刺繍を施した女性グループの名前が記されています。
ナカブ(現ネゲブ)で行われるラキヤ織物織工房のパートナーとして、Adishのコレクションは、ベドウィン地区のコミュニティの女性たちによる伝統工芸の刺繍、織物、タッセルも特徴としています。

このような工芸品の背景には、パレスチナとイスラエルの工房や職人たちのコミュニティ・ネットワークがあり、Adishはすべてのコレクションの生産において、彼らと協働しています。それぞれの工芸品は、各地域の歴史とアイデンティティを表しています。

衣服のひとつひとつに、中東の長きにわたる織物の伝統を象徴するハンドメイド要素が施されています。 伝統的なパレスチナ刺繍から古代のベドウィンの手織りの職人育成は、クラフト・コミュニティや地域の工房とのコラボレーションを通じて行われており、これがAdishの創作活動の核となっています。

複雑な物流を乗り越え、Adishは、コレクションのたびにこれらの工房の拡大と繁栄に貢献し、同時に各作品を通じて工芸品とその背景にいる人々にスポットライトを当てることを目的として掲げています。

ナカブ(現ネゲブ)で行われるラキヤ織物織工房のパートナーとして、Adishのコレクションは、ベドウィン地区のコミュニティの女性たちによる伝統工芸の刺繍、織物、タッセルも特徴としています。

このような工芸品の背景には、パレスチナとイスラエルの工房や職人たちのコミュニティ・ネットワークがあり、Adishはすべてのコレクションの生産において、彼らと協働しています。それぞれの工芸品は、各地域の歴史とアイデンティティを表しています。

衣服のひとつひとつに、中東の長きにわたる織物の伝統を象徴するハンドメイド要素が施されています。 伝統的なパレスチナ刺繍から古代のベドウィンの手織りの職人育成は、クラフト・コミュニティや地域の工房とのコラボレーションを通じて行われており、これがAdishの創作活動の核となっています。

複雑な物流を乗り越え、Adishは、コレクションのたびにこれらの工房の拡大と繁栄に貢献し、同時に各作品を通じて工芸品とその背景にいる人々にスポットライトを当てることを目的として掲げています。